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ボストンパイの謎〜石巻旅行記(15.03.07)

 自分的には二年ぶりになるのか、石巻の街を訪ねてきました。故・石ノ森章太郎ゆかりの地で、かつ言うまでもなく先の震災で大きな被害を受けた街は、街路のあちらこちらにキカイダーやロボコン・サイボーグ009などのキャラ像が配され、ヒーローたちが復興を後押ししているようにも見える。
 …というマクラはさておき。

 何度か石巻を訪問するにあたり、頼りにしてきたガイドのひとつがブログ「石巻百景」。
石巻百景(新館)
 中でも現地で独自の発展を遂げた西洋菓子「ボストンパイ」の存在は、このブログなしには知ることがなかっただろう。
ローカルなケーキ「ボストンパイ」の解体新書(石巻百景・旧館)
 名前こそパイとは言うものの、実際パイ生地は使われず、元々はケーキ作りで生じるスポンジ生地の余りを寄せ集めて出来たらしいボストンパイは、初めて食べても懐かしい気がする不思議な洋菓子だ。
 今回の再訪にあたり、ブログの記事を読み直すと、石巻周辺の他地域に少しだけある同名の洋菓子は、同じ「ボストンパイ」でも幾分中身が違うらしい。
 他所の地域にもあるのかボストンパイ。しかも地域によって差が生じるとか逆に面白いではないか…などと思った数刻後、自分の記憶が節穴だったことに気づいたのである。他所の地域も何も、横浜にあるじゃないですか「ボストンパイ」が!!(注:この文章の執筆者は20年来ヨコハマ在住です)
 横浜の一世代か二世代前の繁華街・伊勢佐木モールに、昔ながらの洋菓子店「浜志まん」がある。その名物メニューが「ボストンクリームパイ」と名のついた一品なのだ。
横浜・伊勢佐木町「浜志まん」ホームページ
何度も横を通っていながら、石巻のソレとの関連など思いつきもしなかった。

 だがまずは、石巻版ボストンパイのおさらいをしよう。
 いくつかの洋菓子店や、市役所と同じ建物に入っているスーパーなどで手に入る石巻版ボストンパイ。「初めての人に」とブログ「石巻百景」で推奨されているのは老舗・平和堂のものだ。

 煮リンゴを挟んで折り重ねられたシラップ漬けのスポンジを、バタークリームでコーティングした作り。シラップで膨らんだスポンジは気泡がつぶれて練りものみたくシットリしている、プディングに近い食感というか(?)少なくともパイと言われる生地のソレではない。
 ちなみにコレは先のブログとは別の伝手で知ったのだけれど、宮城県・仙台中心でオススメの甘味に喜久水庵の「喜久福」がある。中が凍ったクリーム状の小さめの大福で、薄い大福皮の内は二重仕立てになっており、黒餡の芯が抹茶クリーム・黒餡の芯がほうじ茶クリーム、ずんだの芯が白い生クリーム、いずれも美味しい。一番人気は抹茶らしいが、ずんだも氷菓のせいか特有の甘味が軽減され食べやすい。

 また現地で知ったものだが「スフレ」と呼ばれる大型のメレンゲも、石巻の隠れた名物かも知れない。いくつかの店が独自のものを出している。サラダ・玉子・胡麻などの変わり寒天も他の場所ではあまり見ない気がする(長崎で「イギリス」として流通しているものが近いようだが情報のみで未確認)。

 話をボストンパイに戻す。横浜・伊勢佐木町「浜志まん」のボストンクリームパイは、石巻のソレとはまるで別の一品だった。写真はミニサイズのボストンパイだが(ホールはケーキくらいの大きさ)カスタードと生クリームをふんわりしたスポンジで挟み、スポンジの天井は固いマーブルチョコでコーティングされている。石巻版の懐かしい美味しさに比べ、こちらは相当現代的だ。強いて共通点を挙げるとしたら「どちらもパイ(パイ生地)ではない」処だろうか。←よりによってソコか。

 以前にも紹介したとおり(2014年6月の日記参照)横浜・伊勢佐木にほど近い日ノ出町の洋食店では、長崎名物と同じ「トルコライス」なるメニューも独自の進化を遂げ?長崎版(カレーピラフ+トンカツ・スパゲティの盛り合わせ)とも、第二勢力の大阪版(カツのせチキンライスを、とろふわオムレツでとじている)とも全く違う、チキンライスのトンカツのせ(オムなし)という形で供されていたりもする。ボストンパイ同様、これが横浜流として広まっているわけでもなく、あくまで単発の店が個性的に打ち出しているもの。改めて、横浜という街の不思議を思う。
(c)舞村そうじ/RIMLAND ←1505  1502→  記事一覧(+検索)  ホーム